もう数えたくもないン十年前のこと。
20代半ばだったでしょうか。
作詞家の養成コースに参加していたことがありました。
養成コースと言っても専門学校のようなものではなく、なかなか良心的な月謝制だった、某音楽事務所の主催していたものです。
最初は雑誌の公募でした。
喫茶店に置いてあった女性週刊誌の記事を見て、へぇ、試しにやってみよう、くらいの気持ちで内容をメモして帰り、とりあえず応募してみると、しばらくして都内のとあるホールでの無料講演会の案内が届きました。
でもホールですからね、かなりの人数なのだろうなと思いながら、まあ、どんな話が聞けるんだか行ってみるか、くらいの気持ちで向かったと思います。
案の定、数百人が招待されていたようで、周囲に座っていたおばさま達は終了後口々に、何よ、一次合格、ご招待って言うから期待してきたのに、なんて、非常に素直な感情をあらわにされていたのが可愛いかったっけ。
壇上には、当時押しも押されぬ超有名アーティストを育てたプロデューサーの方々や、公募を主催した音楽事務所の社長が並んで、業界の現状的な話をしておられました。
だから今、自分達はもっともっと新鮮な感性が欲しいんです、という。
もう内容は全く覚えてはいませんが、当時の私には、へぇ、なるほどね~な面白いお話だったんですけどね。
その場では特に何もなくすっかり忘れ去っていた頃、2つ目の案内が届きました。
今度は某会議室でした。
ほう、数百人から時間をかけて絞っていたのかと(笑)
出かけてみると、会場は少し広めの会議室で、一気に数十人に絞られていたようでした。
その日は、事務所の社長と養成コースの担当の方の話だったかな。
そこで、残念ながら即採用となるほどの作品はなかったこと、
応募作品が予想よりも大量に届いたため、ひとまず前回の講演会は歌詞として体裁の整っていたものという基準で絞ったこと、
(大量のポエムが届いて、それだけでもかなり時間がかかったらしい)
そして今回は、磨けば使える可能性で絞ったこと、を聞かされました。
ただ、この数十人の中でも、プロとしてデビューできるまで育つのは数人いれば良いほうだろうということも含め。
その上、この日は数十人分、全員その場で、応募した詞のダメ出しがあったんですよねえ。
それくらい、すごく時間をかけて説明してくださったんですよ。
自分で書いたの、覚えてるでしょ?
ひとりひとり、容赦なくいきますからねって。
平気な顔して聞きましたが、いや、ちょっと顔から火を噴きそうだった(笑)
後から言われましたけどね。
分かるよ、プロとしてまだやってない人の詞にはモロに自分が出てるもんね、恥ずかしいよね、あれだけの人数の前で読み上げられたら。でもね、あなた達はそれを世に出そうとして書いてるんでしょ?恥ずかしがってる場合じゃないワケよ、ああいう時はさ、と。
表面的には、そうか、そうだよな、慣れなくちゃなと反省はしたものの、それでも、その言葉の奥に潜んでいたものに当時の私は気付かなかったんですよね。
今なら分かるんです。
私はその時、自分がして貰ったダメ出しすらロクにメモも取れなかった自分を恥じなくちゃいけなかったと。
全員分のダメ出しの言葉だって、全部メモして後で見直して参考にするくらい、どん欲にやっていて当たり前だったんです。
本気だったのならね。
当時の経験は、一般企業のOLで雇われマインドしか持っていなかった私にはカルチャーショックだらけでした。
今にして思えば、とても大切なことを教えて頂いてたんだなと思います。
これって、個人事業にも思いっきり通じるお話ですもんね。
誰に頼まれたのでもない、ただただ自分でコレと決めた目標に向かって、チャンスを、結果を、自力でつかみ取りに行く心構え。
でも、20代当時の私は、何も分かってはいませんでした。
甘いにも程がありました。
その場では、月謝制の養成コースの説明もあったのですが、特にいきなり入会を勧められもしませんでした。
よくありますよね、今日、今、この場で入れば、何割引き、みたいなの。
それをされたら、一発でアヤシイ勧誘だなと思ったんですが(笑)
けれどこの場にいる人達は、自由に担当者に連絡して持ち込みすることも歓迎なので、やる気のある人はもうどんどん来てくださいとのことでした。
なかなか見つからない人材なら、自分達で育ててしまえにシフトしてみた、そんなことも言ってらしたな、社長。
それを真に受け(笑)
月1回程度ではありましたが、 私はそこの事務所の持ち込み生となりました。
これも後で知らされたのですが、この事務所の公募は初めてのことではなかったようで、以前ピックアップしたコースの受講生はその時まだ10数名程度だったそうです。
そして私のように、その日の話を真に受けて定期的に持ち込みしてくる人も、数人程度だったんだそうです。
あの場で有料コースの説明はしたけれど、特にみんなに入れと勧めなかったのは、やる気をフルイにかけていたのかもしれません。
数か月持ち込みをした後、月会費5000円で入会することに決めました。
入会すると、毎月の会報と共に実際に制作中のデモテープが送られてきます。
それを元に詞を書いたら、電話でも訪問でもいっくらでもし放題でした。
毎回2時間くらい、長い時はそれ以上の時間を割いて貰い、時にはその場でキーボードで曲を弾きながら私の詞を歌われ(笑)ここ、音の乗りが悪い、ここ、このメロディに乗せると意味が取りにくい、ここ、本当に女性は共感できると思います?このストーリー、アーティストのコンセプトに合いません、この相手の男、魅力ありません…エトセトラ。フルボッコ(涙)
それでも、しつこく持ち込んでいるうち、最終候補に残った会員みたいな感じで、会報に名前を載せて貰えるようになり、時には会報に自分の書いたものも掲載されるようになり、説明会でしか会ったことのなかった事務所の社長にもアポを取って頂けるようになりました。
その事務所は、今調べればその頃から、うっそ、アレもか!なところだったんですけど、当時はネットも普及しておらず、私にはどの程度の事務所なのか、どれくらいスゴイ社長なのか、よく分かってはいませんでした。
当時送られてきた仮歌入りのデモテープ、今じゃ多分お宝モノもあるんですが。
何度か、事務所主催のライブのチケットを頂いたりもしてたんで、疑うことはなかったんですけどもね。
そういえば、満員の武道館のライブで、関係者席のチケットを貰った素人、周囲は腕組み頬杖のおじさま達でさ、わーい♪と立つに立てず、うずうずしながら座って見てた、なんてコトもあったわな(^m^)
何より途中から担当になってくれた方が、本当に真摯に相対してくださったんですよね。
ある時、どうしても言葉が出なくてジタバタしていた時に言われたんです。
少し厳しいことを言いますよ。別にこちらは、あなたが辞めようがどうしようがどうでもいいんです。でも産みの苦しみでのたうち回っても必死で喰らい付こうと努力するなら、とことん付き合うつもりでいるんですよ、と。
確かこの時は、ひとつのフレーズをこの場で書き直せと、1時間くらい会議室に放置された後でした。
でも、私にはどうしても捻り出せなかったんです。
どれもこれも違う気がして。
何十かのフレーズを羅列して見せるくらいの根性もありませんでした。
戻ってきた担当の方の、落胆した目が忘れられません。
これを言ってくれたあの人は、めっちゃカッコ良かったなと今でも思います。
見た目も業界人、カッコ良かったんだけどね(^m^)
うちで続けていれば絶対に間違いはありません、そう思う日が絶対に来ます。それだけのことを真剣にやっている会社なんです、彼はそうも言っていました。
辞めた後に、私はそれが本当だったと知るワケです。
そこの事務所は数年後、超巨大な組織へと成長を遂げたんですわ…
入会後は1年ちょっとくらいだったのかな、入会前に持ち込みしていた時と合わせたら、1年半程度でしたか。
ま、それだけの時間をかけても私の詞は決定打に欠けていたってことなんですけど、その間、会員の中からデビューできたのは確か2人くらいだったと思います。
定期持ち込みをしていた4~5人くらいの中の人達でした。
次はあなたですからって、随分ハッパをかけて頂いていたんですけど、その頃、丁度お世話になっていた担当の方の異動とうちの転勤が重なってしまいました。
直接持ち込めていたこと、それがどれだけのアドバンテージであったか、それまでの担当の方がどれだけ目をかけてくれていたか、岡山に転居し、新しい担当の方との電話でのやりとりで、私はようやく気付いたんです。
でも、時既に遅しでした。
そんな大きな失敗の経験をしていたにも関わらず、私は30代前半でもう一回、似たようなアホを繰り返す訳ですが(笑)
まあ、長くなるのでそれはまた。
それから数年してまた関東に転居し、その後に出会ったパソコンやインターネット、WEBサイトのお陰で、私はまたあの頃とは少し形の違う産みの苦しみを手にしました。
だけどあの頃と明らかに違っていたのは、年月を経て、小さな子供が2人もいて、もっと身動きの取れない状況だったにも関わらず、そこに向かう自分の姿勢だったし、何より苦しんでも楽しくて仕方がなくて寝る間も惜しんで徹底的に取り組んだところでしょうか。
多分詞を書くより、自分の質により見合っていたのかもしれません。
私が持っている星にも出てたりしますね、インターネットへの指向(笑)
ただ、この20代の時の経験から気付いたことは、誰に頼まれた訳でもない、自分が自分の意思で目標と決めた物事に立ち向かう、自らの手で人生を切り開く基本姿勢として、大きく私の中に足跡を残してくれました。
当時関わってくれた皆様には、今でも本当に感謝しています。
今にして思えば若気の至り、甘ったれた気分を捨てきれなかったせいで、期待に沿えなかった忸怩たる思いと共に。
先日、とある夢への一歩を踏み出したお若い方と、ちょこっとだけお話させて頂きました。
その時に零れた言葉から、随分と古い話を思い出してしまいました。
その方がこのブログを目にすることはないかもしれませんが、ちょっと書いてみたかったのです。
心から、応援しています。
あっ、ショップはもうじき年末セールの予定で~す♪
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